愛子天皇が「韓国人と結婚」したら、皇室は乗っ取られる!…のか?



文/宮本タケロウ

「女系天皇」と「皇室乗っ取り」

女性天皇や女系天皇の議論の際によく耳にすることがあります。

それは「女系天皇の夫が外国人なら、日本が外国人に乗っ取られる」という主張です。

これは、男系という血統を基準とする思考から出た主張だと思いますが、頭の体操として非常に示唆に富んでいる考えですので、詳しく見ていきたいと思います。

世界には女王の配偶者が外国人男性である国がヨーロッパを中心に多々あります。例えば、イギリスのエリザベス女王の夫・エジンバラ公はギリシャの王子フィリップ・マウントバッテン王配であり、またデンマークのマルグレーテ女王の夫はフランスの貴族(モンペザ伯爵)のヘンリック(フランス名はアンリ)王配です。

(エリザベス女王とエジンバラ公フィリップ王配)

しかしながら、イギリスでもデンマークでも「イギリスがギリシャに乗っ取られた」や「デンマークがフランスに乗っ取られた」ということは聞きません。

確かに、世襲の国家元首の夫が外国人だからと言って、その国自体がその外国人に乗っ取られるというのは論理構成が破綻していますので、「国が乗っ取られる」というのはあり得ないことでしょう。

しかしながら、それを、その「国家」ではなく、その「王統/王家」を中心に見てみると、少し違った結論になります。

英国の王室の名称はウィンザー朝であり、英国王族の“姓”も「ウィンザー」となっていますが、エジンバラ公の息子である現在のチャールズ皇太子以降はそれが「マウントバッテン・ウィンザー」に代わることとなっていますし、また、デンマークのマルグレーテ2世の皇太子フレデリックはフランス人である父の「モンペザ伯爵」の爵位を継ぐこととなっています。

モンペザ伯爵家から見れば、モンペザ伯爵家の当主がデンマーク王位に就くことになるので、言い方としては「モンペザ伯がデンマーク王室を乗っ取った」という言い方は可能でしょう。

これは男系の血統を系譜の前提とするというのが、ヨーロッパの系譜文化の基準であるということを端的に表していますね。

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東アジアの“姓”の概念

それでは、翻って、東アジアの状況を見てみましょう。

東アジアもヨーロッパと同じく、伝統的におおむね男尊女卑・男系の社会でしたが、特徴的なのは、朝鮮半島や日本をはじめとする東アジアの国々は、古代中国から“姓”の概念を移入し、共同体の社会システムとして機能させてきたという点です。

この“姓”の概念/システムには「異姓不養」(異なる姓の人間を養子にしない)という社会規範があります。

歴史学者の大藤修氏の書籍『日本人の姓・苗字・名前』にはこうあります。

父子関係の連鎖による血の永続の観念に発している。血筋は父から男子へと伝わるものであり、血筋こそ生命の本源と考えられ、「気」という言葉で表現される。

男性の「気」が「形」とされる女性の体内に入って新たな生命が誕生するのであるが、その生命の本性は父から受け継いだ「気」によって定まり、父系の血を引く男子がいる限り、生命の本源たる「気」は未来永劫に流れていく

このような生命観からすれば、先祖を祭祀する資格は必然的に同一の血=「気」を受けた男子のみが持つことになり、実男子のいない場合の養子も同姓の父系血縁に連なる男子でなければならず、その血縁にない異姓の男子を養子にすることは禁じられたわけである。

大藤修『日本人の姓・苗字・名前』吉川弘文館、2012年、10頁

いかがでしょうか。この「異姓不養」の原則は、上記の引用すべてにアンダーラインをしたいくらい、日本の皇統の男系主義を表していると思います。

このように男系の血統、生物学的な父子関係の記号として機能するのが“姓”の概念ですが、前述の『日本人の姓・苗字・名前』によれば、“姓”の概念は日本では限定的にしか定着しなかったとあります。

姓制度の日本社会における受容のあり方で、注目すべきは、「同姓不婚」と「異姓不養」の規範が定着しなかったことである。(中略)

中世以降に「家」が形成され、生物学的な父系血統の永続よりも、「家」という組織体の永続が施行されるようになったために、父系血縁にない他姓の男子であっても養子にとって家を継承させようとしたからである。

同上、20頁

日本においては“姓”の制度は中途半端にしか定着せず、異姓の子供も自由に養子していたのが日本の伝統社会であったということがわかります。

確かに、藤原氏の近衛家や一条家も皇室から養子が入っていますし、上杉謙信で有名な米沢藩・上杉家(藤原氏)も江戸時代に吉良家(源氏)から養子が入っているのは有名です。

朝鮮半島では「姓」の制度を徹底した

では、朝鮮半島ではどうだったのでしょうか。実は、朝鮮では日本のような曖昧な形ではなく、“姓”の制度を徹底して導入したことが知られています。

高麗王朝時代の末期から次の李王朝時代(1392~1910年)にかけて、朱子学の導入と両班社会の成熟に伴い、「同姓同本不婚」と「異姓不養」の規範が定着していった。

そして、父系親族集団の宗族が両班社会の基底を構成するに至っている。

同上、12頁

このように李氏朝鮮の時代から儒教(朱子学)を徹底させて統治原理に採用したのが朝鮮半島でした。

朝鮮の男系主義の徹底はすさまじく、「“姓”は男系の血統で定まるものである」という「父姓不変」の原則によって、異姓の養子縁組を行うときにも、養子は養父の戸籍に入っても姓が変わらないという制度が最近まで続き、2005年になってようやく改正された民法で、裁判所の許可によって例外的に養子の改姓が認められるというようになりました。

養子になっても、養親の姓を名乗ることができない」ということは、考えてみればすごいことです。

例えば、子供がいない佐藤さん夫婦に、鈴木さんの息子・鈴木太郎さんが養子に入ったとしましょう。日本では鈴木太郎さんは佐藤家に入って、「佐藤家の跡継ぎ、“佐藤太郎”」となりますが、韓国では、佐藤さん夫婦の跡継ぎであるにも関わらず、実父の姓のままの“鈴木太郎”ということになるのです。

韓国は夫婦別姓ですから、子と夫婦も別姓、家族3人が別姓を名乗ることになりますね。

これは佐藤家からしたら、誰がどう見ても、「佐藤家が鈴木家に乗っ取られた」というふうにしか見えませんが、あくまで「“姓”というものは男系の血統/父子関係の記号である」ということがよく分かると思います。

韓国人「皇室乗っ取ったぜー!ウェ~イ!」

いかがでしょうか。

仮に日本で女系天皇が容認され、愛子さまが天皇に即位したとして、その夫が韓国人であったら、と仮定してみましょう。

韓国や中国のような“姓”の概念を徹底した文化圏にあっては、結婚相手が日本の女性天皇であろうが、イギリスの女王であろうが、夫が韓国人の男性なのであれば、自動的にその子供は夫の姓を継ぐのが当然であるとして受けとめられることは間違いないといえるのではないでしょうか。

いくら日本人が「皇室は“姓”がない。皇室に嫁いだら“姓”はなくなる」と強弁したところで無駄です。

“姓”の定義はあくまで男系の血統/父子関係の記号ですので、韓国人からしてみたら、

「ウェーイ、韓国人が皇室乗っ取ってやったぜー! ウェ~イ!」

ということになるのは間違いありません。

想像図「韓国人が皇室乗っ取ってやったぜ~!ウェ~イ」

これから世界はグローバリゼーションが進んでいきます。ゆくゆくは、皇室も国際結婚をしていくことになるかもしれませんが、そのリスクも同時に見ていく必要があるのではないでしょうか。

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