昭和天皇の発見した「コトクラゲ」が79年ぶりに採集される 新江ノ島水族館で展示中



文/伊藤友香子

昭和天皇が発見した「コトクラゲ」

79年前に昭和天皇が発見された「コトクラゲ」が、7月30日に神奈川県藤沢市の江ノ島沖で見つかり、現在新江ノ島水族館(藤沢市片瀬海岸2丁目)で展示されている。相模湾での発見は昭和天皇の採集以来、初めてのことであるという。

コトクラゲは、江の島沖の水深130メートルの岩礁域で、水中ドローンによる調査で発見・採集された。クラゲの仲間で、海底に付着し、プランクトンなどを食べて生きている。沖縄から相模湾までの海中に分布し、採集記録が極めて少ないことで知られている。

同水族館によると、相模湾では1941年に昭和天皇が採集して以来、採集されておらず、79年ぶりの発見・採集という。同館の担当者は「コトクラゲを実際に見た人はほとんどいないと思う。この機会に見てもらえれば」と話している。

『朝日新聞デジタル』2020年8月14日配信

新江ノ島水族館では、「皇室ご一家の生物学ご研究」として、昭和天皇や上皇陛下、秋篠宮殿下の研究成果を展示している。

皇帝の名を冠する稀有な生物

さて、皇室の生物学研究はしばしば、「所詮趣味のレベルなのでは?」といった見方をされがちだが、昭和天皇はそうではなかった。最後の側近として知られる卜部亮吾はその日記の中で、「植物やご専門の海洋生物の話になると、もう誰もついていけないほどの知識をお持ちだ」と綴っている。

昭和16年1月14日から、海洋生物採集のために葉山に入られていた昭和天皇。『昭和天皇実録』には、コトクラゲ発見の経緯が記されているので引用したい。

十五日 水曜日午前、葉山丸に召され、江ノ島の南方約三キロの海上において生物を採集される。その際、水深七十メートルの海底よりドレッジにて引き揚げられた採集物の中からクシクラゲの一種と思われる極めて珍しき形状のクラゲが発見される。

この日の発見により、以後連日江ノ島南方において採集を試みられ、十八日午前には再び同一のクラゲの破片が採集される。

『昭和天皇実録―第八』宮内庁、2016

当時、昭和天皇の相談相手であり、その生物学御研究にも奉仕したびたび進講を行った駒井卓に種の同定が依頼され、翌年学名を『Lyrocteis imperatoris』と命名された。この“imperatoris”という部分はラテン語で「皇帝」という意味である。

御採集のクラゲの標本は、後日、調査のため京都帝国大学 理学部教授 駒井卓に関係資料とともに下付され、調査の結果、新種と判明し、学名をLyrocteis imperatoris 和名をコトクラゲと命名される。

『昭和天皇実録―第八』宮内庁、2016

皇帝の名を冠し、採集事態が珍しいコトクラゲ。現在の情勢によりなかなか現地へと足を運ぶことは難しいが、昭和天皇の事績に触れられるのはありがたいことだ。

さて、秋篠宮殿下はナマズ研究の第一人者として知られ、多くの生物学関連のご公務を担っているが、あくまでもそのご研究は趣味の範囲を脱しないとも言われている。昭和天皇の意思を継ぎ、今後は立派な功績を残されることを期待したい。


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